あそびーのマガジン

記事内の住所は、取材当時のものです。


 特集
asovino magazine
山肌に吹き渡る風、一面に揺れる水仙。たおやかな風情には強い生命力をたたえて。
海と山に囲まれた真冬の花里では、花も人も優しくたくましい。

image ■かぐわしい越前水仙の里へ■ image
越廼村居倉地区は越前水仙発祥の地。水仙はすでに江戸時代には有名な産物だったらしく、群生地のみならず切花出荷の歴史も長い。海と水仙の群れを望んで一大公園があり、「越前水仙の里」として花を愛する人びとの想いを伝えている。
来る年ごとにすらりと咲く花は、冬の険しさを柔らかに受け止めて、ただ無心に季節との約束を果たしているかのよう。風雪にあっても折れずしなやかに、雪の冷たさの中からまた起き上がる。
そんな強さの水仙を、越廼の人々は古くから愛し、急峻な山肌に、まさに野にあるままに守り継いできた。どんなに厳しい自然でも小さな命の輝きを約束してくれている、そんな信頼が人と花に通っているようだ。
写真 写真 写真
日本海の冬とともにあってこそ、強さがいっそう気高く美しい。
越廼村で出会える水仙の風景は、とても贅沢な自然の贈り物かもしれない。
写真
写真
写真
写真
写真
写真
写真
写真
写真
写真
写真
写真
写真
写真
写真
写真
写真
写真
写真
写真
写真
写真
写真
写真
●冬を白く染める“花”の饗宴
居倉から南へ、数十kmに渡る越前海岸一帯は、例年12月から2月にかけて真冬の“花”で埋まる。時に風花や浪の花が舞う海沿いを走れば、かたや山肌を埋めた緑の絨毯に、黄色い冠と白いびらが思い思いにひるがえる。
海風が身を切る寒さになると伸び上がる花茎を、越廼の人は「ヤリ」と呼ぶ。球根の中で眠っていた花芽が起き出して、またたくまにグンと伸び上がり、冬景色の中に清楚な輝きを灯すように、春がほころび始めるまで次々と咲き継いでいくのだ。
●波間に寄せる、水仙の伝来ロマン
3〜4世紀ごろには中国に渡ったらしく足跡を残す水仙だが、この地に来た由来はよくわからない。室町時代以降の文献に水仙が登場し始めることから(15世紀に越前の国府から都に贈られた記録がある)、日本に渡ってほどなく越前に根付いていたことが思われる。
多くは暖かい海岸に自生するので、対馬暖流にのって浜に流れ着いたか、あるいは人の手によって渡来したものを都から持ち帰ったのでは、という説がある。海からやって来たとしたらとても雄大なロマンで、実際海水に浸かった球根でもちゃんと育つという実験結果もあるのだ。越前水仙(ニホンスイセン)を含む「タゼッタ」と呼ばれる水仙の仲間は、遺伝的に種を結ばず交配もしにくく、いわば極めて原種に近い。もしかしたら地中海の海辺で咲いていたのと同じ姿で、越廼の海を眺めているのかもしれない。

そのためか、居倉地区の刀上の浜には次のような物語がある。
平安末期、ある若者が浜で美しい娘を助け連れ帰った。折りしも源平の争いの最中で、男の兄は父と戦に出ており、弟として留守を守りつつ男は娘に心を寄せていく。そこへ兄が帰還し娘と夫婦となって家を守り継ごうとする。兄の思惑は弟の想いとぶつかり、仲の良かった兄弟にいさかいを呼ぶ。その痛みに娘は身をひく決意をし、ついに荒波に身を投げる。翌春その浜に流れ着いた美しい花が、娘の化身のようだと丘に植えられた。それが越前水仙発祥の伝説だ。
越廼と同じく対馬暖流の流れる隠岐にも、海に散った女達の跡に水仙が咲くようになったという戦国時代の伝説がある。華奢な女性を思わせる水仙は海に似つかわしいよう。刀上には、その名の通り御神刀が流れついたという謂われもあり、浜に立つとやはり「波が運んだ」ロマンに軍配をあげたくなる。
ページTOPへ >>

●春夏秋冬、いつでも水仙に会える「水仙ドーム」
伝説の舞台に建つのが「越前水仙の里公園」のメイン施設の一つ、「水仙ドーム」だ。潮騒を目前にしたガラス張りのゾーン内には、水仙の通年開花に成功した日本で唯一の低温室があり、年中いつでも3000本の水仙の群れと香気で満たされている。ここでは、甘く青い香りに浸りながら、水仙畑の四季の移ろいが5分間の音と光のショーで再現される。
ドーム内はまるごとミニ植物園状態。中国で水仙との夫婦花とされる蘭や、ヒガンバナ科の水仙の仲間たち、球根植物や野原の花々、水辺空間などが折々に迎えてくれる。映像で楽しむ「なんでもQ&A」コーナーもあり、リラクゼーションに利く水仙ポプリの作り方や水仙の育て方解説にちょっと得した気分。
●和の伝統に息づく水仙の美と海際の散策
ドームを出るとそこは「水仙ギャラリー」。江戸時代に高嶺の花ながらも飾花としてブームになった花姿は、焼き物・漆器・工芸品・装飾品など様々な和の美に写しとられた。その一端がじっくり鑑賞でき、美術好きの方に見逃せないコーナーだ。
ドームの前には四季の花壇が広がり、フクイゆかりの現代歌人・俵万智氏の水仙に寄せた直筆歌碑など、天気が良い日は潮風に身を任せて憩いたくなる。水際すぐに伝説の娘が身を投げた岩があり、海鳥ものんびりと、カメラにおさまりたがっているようだ。ただし海が荒れる日は波しぶきにご用心を!お腹に響く怒涛の音、白く泡立ち一面にうねる日本海の迫力はハンパではない。
ページTOPへ >>

●丘へ登り、
  「水仙ミュージアム」で水仙のルーツと世界の文化を体感
公園のメイン施設はもう一つ、国道305号線を挟んだ山側、水仙畑の丘にある「水仙ミュージアム」だ。高台からは、世界各国の水仙が育てられる観賞園越しに、眼下の海が一望でき、遠い海鳴りを聞いている水仙の気持ちになれる。
館内のメインゾーンは、水仙の歴史・文化・科学・伝説など、学術から芸術までが親しみやすく紹介され、謎とロマンに溢れた水仙のルーツ、美術・文学・工芸や暮らしの文化、薬効や香りまで、ここへ足を運べば多彩な水仙の世界に詳しくなれる。
館内には手作りの水仙押し花グッズや、甘い香りが楽しめる越廼村オリジナルの水仙グッズ、水仙デザインの越前漆器なども購入できる。1月には、美しいフラワーアレンジメントも登場する。
●各界や世界と交流を深める水仙情報の拠点
実は“水仙”専門の情報を集めた施設や機関は極めて少なく、越廼村は率先してその情報交流を内外に働きかけてきた。平成5年には、中国の水仙の主要産地である福健省との交流とともに、水仙ゆかりの全国自治体が集った「第1回水仙サミット」を、さらに平成8年には世界の水仙研究とともにルーツをたずねる「1996世界水仙会議 in KOSHINO」を開催し、その折りにスペインのバルセロナ植物園・研究所と友好提携を結んでいる。
そんな水仙への情熱のもと、俵万智氏や池坊家など水仙を愛する各界からの資料も数多く寄せられ、その一端を覗き見ることができる。
ページTOPへ >>

●世界的にもとても貴重、「原種栽培展示館」
未登録の品種も含めれば3万にも及ぶといわれる世界の水仙。華やかで多彩な園芸種を扱う植物園はヨーロッパなどには多いけれど、原種となると殆ど例がない。
越廼村が保有する原種のコレクションは、おそらく世界随一といっても良いほどなのだ。バルセロナ植物園・研究所とその関係研究者の協力のもと、今ではここにしかない貴重な種もある。
多くは地中海生まれの原種の球根はとても小さく、種子がこぼれるものなど様々。気候の違いも加わってその扱いには苦労するのだが、ミュージアムの体制は万全。温度、栽培法、管理分類など、細心の注意と愛情をもって、世界の自然と学術の大切な宝として育てている。12月には「カンタブリクス」「ロミエクウシ」など、モロッコやスペイン原産のものが咲き始め、5〜60種に及ぶ野性味にあふれ素朴な水仙原種が、翌春まで順次愛らしく開花し公開されていく。
●水仙の里の隠れた心臓部、1本1本に細やかな技術と経験を
通年開花の技術や原種の管理、また数百種にも及ぶ各種品種の栽培を手かげてきた越廼村。他に先がけた取り組みでもあり、「全く手探りの連続だった」と、越前水仙の里管理課の別司さんと川崎さん。相手は物言わぬ花、自然の力とサイクルに向かうデリケートで謎深い世界だ。
ミュージアムのさらに奥には、そうした栽培の心臓部とも言うべきハウス群が並び、栽培室や育成室、各種処理室や保存室など、様々な設備を使ってきめ細やかに管理・栽培・育成を行っている。四季を通して美しい水仙を花開かせるために、眠りから覚めたものや開花まじかの状態など「毎日が水仙達のご機嫌うかがい」。
温度調整や遮光、保温や潅水などの設備を備えたハウスでは、日々水仙たちにもっとも心地よい環境になるように、スタッフは経験と技術をフル動員する。
●自然の理に熱意と愛情を込めた育成・研究へ
球根たちは四季の気温や環境の変化を感じ取って花を咲かせたり休眠したりと、独自のサイクルをもって生きている。
その自然の理を読み取って、開花期と異なる時期に目覚めさせたり眠らせたり。望みの時期に成長・開花させる要は、各段階にあわせた環境を知り尽くしてコントロールする技術だ。保存や開花のプロセスごとに厳密な温度や管理が必要となるため「異常があれば夜でも駆けつける」と別司さん。その対象となる球根は数万個にも及ぶ規模。その技術と情熱は大変なものだ。
またここからは、平成7年に2つの原種をかけあわせて新品種を作り出したり、地中海に研究に出向いた折に新種も発見するなど、新たな可能性の探索も行われてきた。川崎さんは、そうした交配や成長の研究や原種の管理育成などに熱意を注ぎ、世界の水仙への造詣も深い。今年も咲き始めた原種にそそぐ眼差しは、わるで我が子を慈しむようなあたたかさだ。
また矮小栽培や中国の伝統的な観賞用水仙の技巧「蟹爪水仙」等、ユニークな技法も手がけられている。
こうした「越前水仙の里公園」の取組みは、1960年ごろから水仙の抑制・促成栽培を開発してきた越廼村の水仙への想いとともに、現代の越前水仙栽培の貴重な核となっている。
●自然のままに共存、四季にしみとおった水仙の里の暮らし
越廼の水仙群生は、その殆どが野生の姿を留めたままで栽培農家が手入れを施しているもの。むしろいかにも「畑」らしい整地栽培は少なく、大部分は自然そのままの“天延畑”だ。
余計な人為は及ぼさず、その分自然のたくましさも奪わない。急な斜面が続く群生地での作業は、足元も覚束なく大変な重労働だが、その中に生きてきた人々は、その大切さをよく知り抜いているよう。葉が枯れれば堀りあげ、勢いが無くなれば休ませ、植え替え、力を貯えさせてと、花の命にあわせた優しい知恵が身についているのだ。
こうした群生は越廼の山肌を清々しい青さで染め上げ、けわしいながらも優しげな水仙の里の表情を感じさせてくれる。そこから刈り採られた水仙は、ニホンスイセンの中でも際立つ強さと香りで、毎冬全国へと旅立っていく。
 
越前水仙の里では、四季自然のサイクルにあわせて、水仙を知り尽くした人たちによって、美しい花の命が受け継がれていくのだ。
写真 写真

ページTOPへ >>

■ 越前水仙の歳時記 ■
12月−2月
水仙の開花期。その年の天候により、早い年は11月下旬から開花しはじめる。
今年は夏〜秋の気象の影響により開花が晩く、1月から開花が本格化する様子。開花後も見頃は長い。
 
1月中旬-2月初旬
群生の最盛期に越前海岸一帯3町村で「水仙まつり」が催される。
越廼村では例年「水仙まつりinこしの」のイベントで賑わう(2003は1/25・26に開催)。
 
2月上旬−4月
開花後の球根が新しい力を貯える時期。切花された球根の場合、栄養を与えるなど、球根の肥大を助ける。
 
5月−6月
茎葉が枯れたら、球根は充分に成長している。堀り上げて日陰で乾燥させ保存。茎葉は自然に取れる。
 
球根は休眠し内部に花芽が育っていく。畑では数回の下刈りや密生地の手入れ。
 
9月下旬−
球根の植え付け。
秋になると球根は新しい葉を出し成長に入る。
 
11月−
花芽を含んだ茎が育ち蕾・幼花を育てる。まもなく開花しはじめ、12月の切花出荷最盛期へ。年末に向けて水仙畑が忙しくなる。
 
寒さが緩み始める頃、冬を彩る越前水仙の花は出番を終え、やがてカラフルな洋水仙達が登場し、本格的な春となる。越廼の水仙たちは、花を守ってきた里の想いに応えるように、冬の終わりを告げる時を夢見て風に楽しげに身を任せているようだ。
image
異国からたどり着いた花は、越廼のたくましさが気に入ってここに根を降ろしたのかもしれない。
□取材協力:福井県越廼村水仙の里管理課 「越前水仙の里公園」

ページTOPへ >>

■ INFORMATION ■
写真 ●「越前水仙の里公園」
越廼村水仙の里管理課
福井県丹生郡越廼村居倉43-25 〒910-3555
TEL 0776-89-2381 FAX 0776-89-2383

同公園内施設
●「水仙ドーム」 TEL 0776-89-2381
●「水仙ミュージアム」 TEL 0776-89-2081

・開館時間 9:00〜16:30
・施設見学料金(水仙ドーム&ミュージアム共通入館料)
 大人(高校生以上) 300円/小人(中学生以下) 200円
 団体(20名以上)は大人250円/小人150円
 父兄同伴の幼児は無料
・駐車場 無料(ドーム側駐車場は大型車可)
※ ドームとミュージアムそれぞれに駐車場がある他、徒歩でも散策できる距離(約5分)。中腹からの海の眺めも楽しい。公園への立ち寄りは無料で、ドライブ休憩にもおすすめ。
・休館日 年末年始(12/28〜1/1)を除き無休


● イベント「水仙まつりinこしの2003」 ●
写真 平成15年1月25日(土)〜26日(日) 2日間
「越前水仙の里公園」を会場に、ドーム、ミュージアム、屋外などで多彩なイベントが開かれる。水仙はもちろん、カニや鮮魚など自慢の海産物もいっぱいだ。

主な内容
・さまざまな水仙に出会える特別展示
世界の水仙(園芸品種)展/生花展/原種展/写真コンテスト入選作品展 など
・越前海岸の特産品、フクイの美味しいものいっぱい
越前海岸特産物展示即売会(9:30-16:30)/海の幸・山の幸・里の幸フェアー/スピードくじプレゼント など
・ショーやステージで楽しくふれあう
オープニングもちまき/太鼓/風船ショー/歌謡ショー/親子切花・押し花体験/水仙クイズラリー など
※ 期間中は両施設内がオトクな入館料(大人200円/小人100円)で見学できる。入館者にはカニや水仙のプレゼントチャンス(抽選)もある。

このイベントは、「越前海岸第28回水仙まつり」(越廼村・越前町・河野村)の期間中に、越廼村のメインイベントとして行われます。
越前海岸第28回水仙まつり
期間:2003年1月11日(土)〜2月2日(日)
毎年冬の最大イベントとして、期間中は「旅人プレゼント」や3町村それぞれの催しが多彩に繰り広げられる。

詳細は、「あそびーのフクイ」HP>イベントカレンダー>「水仙まつりinこしの2003」ページでどうぞ。

ページTOPへ >>



● 水仙の香りを愉しむ情報 ●
写真 ●水仙の花 宅配発送
越前水仙は切花出荷の他、毎年宅配受付も行われている。お申し込みは原則として12月10日までだが、天候や開花状況によってはそれ以降も発送できる場合がある。
特に今年度は、開花期のずれ込みから発送状況が大きく変わっている。ご注文をお考えの場合、ぜひ一度お問い合わせをどうぞ!

 ○水仙の花 30本(1箱)3,000円 50本(1箱)4,500円
  送料・消費税込
  ただし運賃加算として、北海道・宮崎・鹿児島・沖縄へは+400円、東北・九州地方へは+200円)
  ・発送期間
   原則として12月1日〜1月末日(天候や開花状況により異なります)
  ・注文方法
   郵便振込みご利用の他、電話やFAXにても受付
  ・お取り扱い・問い合わせ
   JA越前丹生 越廼村支店 水仙宅配係
   TEL 0776-89-2019 FAX 0776-89-2545
   福井県丹生郡越廼村茱崎14-7-2 〒910-3552

写真 ●想い出を水仙グッズで確かめる
越廼村オリジナルの水仙グッズは、甘い香りと安らぎが楽しめたり、可憐な花姿をクリスタルに包んだものなどがある。いずれも日本一の「水仙の里」づくりの一環として独自に開発されたものだ。特に越前水仙から抽出した香りの香水は世界初のものだ。
 ○入浴剤「雪中花」 \500
 ○香水「JUNO」 \1,200
 ○クリスタルフラワー「雪中花」 \1,500〜\2,500
 ○ティスティグラス「越の花」

お求めは水仙ミュージアムで。

水仙グッズは「越前水仙の里公園」併設の売店等でも販売されている。大漁旗が彩る公園の売店には水仙に因んだ地酒や海産物などお土産も並んでおり、1月のおすすめは越前がに。カレイの干物や丸干イカも人気がある。
 売店「樽海ナルシスプラザ」 TEL 0776-89-2755(8:30〜16:30)

越前水仙の里情報、グッズ等のご案内は越廼村のホームページへ。
「越前水仙の里」メニューに詳細が掲載され、「水仙栽培質問箱」もある。
http://www.vill.koshino.fukui.jp/

ページTOPへ >>